【不動産購入申込書とクーリングオフの適用について】

【質問】

宅建業法上のクーリングオフが適用される場所である買主候補者の自宅で、売買契約書の締結前に購入者に書いてもらっている「購入申込書」に署名・捺印をしてもらったうえで、その3日後に宅建業者の事務所で売買契約を締結しました。この場合、購入申込書の作成が買主の自宅で行われていることから、クーリングオフは適用されますか?

 

【回答】

①結論として、本件では宅建業者の事務所で売買契約が締結されていることから、クーリングオフは適用されません。

②宅建業法第37条の2第1項は「買受けの申込みをした者」に買受申込みを撤回する権限を与え、クーリングオフの適用を認めています。

③しかし、法律上「買受けの申込み」というのは、売買契約が成立する要件となる買主の「買う」という意思表示を指し、具体的には売買契約書の買主欄に署名押印することを意味します。

④売買契約書の締結前に購入者に書いてもらっている「購入申込書」ないしは「買付証明書」は、上記の買主がこの物件を「買う」という確定的な意思表示ではなく、単に「買主候補者としてこれから売買契約の締結交渉に参加させてほしい」、あるいは、「当該物件について売買契約締結の優先交渉権を付与してほしい」という意味しかありません。

⑤したがって、「購入申込書」はクーリングオフが適用される「買受けの申込み」には該当せず、購入申込書を受け取った時からクーリングオフの期間が起算されることにもなりません。

⑥本件での買主の購入申込みは、あくまでも売買契約書に署名(記名)・捺印する行為となります。そして、売買契約の締結自体は宅建業者の事務所でなされている以上、クーリングオフは適用されません。